約 349,549 件
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/57.html
1 宿酒場、民羽(みんう)。 娘と二人で切り盛りしている民羽六三郎(みわろくさぶろう)の店だ。 現在この場所にいるのは、数名のハンターのみ。 いつもの常連客等は、ハンターが利用するからと遠慮して来ないと六三郎は言うが、実際の所はよそ者を警戒しているせいで寄り付かないと言ってもいいのだろう。 水鏡「実際、俺も以前来た時はこんなもんだったぜ。その時は俺と数名のハンターで来たから、まだシカトされるだけで済んだんだけどな」 しかし、今回はかなりの大所帯だ。ざっと見ても20名近くはいるだろう。 そんなに大きな宿でもないので、結構部屋はギリギリと言ったところか、と水鏡流星は語る。 六三郎「お前たちが憎いわけではないんだ。…ただ、この集落の特性というか、なんというか…」 ちょうど新鮮な魚を使った料理を持ってきた店主、六三郎が申し訳なさそうに呟く。 聞かれていた事に、罰が悪そうに水鏡は愛想笑いをするが、既に遅かった。 話題を変えようと、水鏡は白神凪に話題を振る。 水鏡「…そういや凪、さっきからどうした?挙動不審だぞ」 そう聞かれた凪は、先ほど揉めていたハンター達について尋ねる。 水鏡「あー…あいつらならとっくに出てったよ。でも栄命島に行ったようには…港に行ったようには見えなかったな。鎮守もどっかに行ったみたいだぜ? …行き先まではさすがに知らねーよ。でもそういや一人、ここにいたか」 言い方的に、小此木剛毅と一緒にいたハンターだろう。 小此木、砂金、菅野ともう一人。中でも小此木はAクラスハンターという事もあり、目立つ存在だ。 水鏡「埠洋次(はとばようじ)。蒼のハンターで、あんまり詳しくは知らないんだが…そいつは前回、俺と一緒に来てたハンターの一人だな。そういやさっきからずっと部屋から出てこないで、何をしてるんだか」 コーヒーを飲みつつ、凪の質問は一旦区切る。 次に月宮香蓮の話に移る。 水鏡「あー、観光スポット?ここにそんな場所あったっけか…」 六三郎「三段岬だ。観光客ならそこに行く」 水鏡「…ってちょっと待てよ!あんたそこって…」 六三郎「…」 水鏡「…~~っ。俺はあんまりオススメしないスよ?」 何か知っているらしかったが、それ以上は六三郎だけでなく、水鏡も口を閉ざした。 おそらく彼らに聞くより、行った方がはやいのだろう。 最後に、向坂維胡琉の話題に移る。 失踪した恋人についてだ。 依頼主に話を聞こうとした維胡琉だったが、村長に呼び出してもらったが来ない。 水鏡「バックレられたっすねそりゃ。でもなんつーか、前以上によそ者嫌いになってる感じはするな。まあ、失踪事件があったから尚更なんだろうけど…」 ?「お父さーん!今日の夕飯何にするの?わたし買い物いってくるけど」 と、ちょうど2階から降りてきた民羽六三郎の娘、柑奈(かんな)が、貴方達に気づき作り笑顔を向ける。 水鏡「あ、そういやあの子…」 その時、水鏡が何かに気づいたようで、柑奈を貴方達がいる席へと呼ぶ。 水鏡「君、ちょっといいか?」 柑奈「え…あ、あなた…!わたしは何も知りません!」 水鏡が声をかけるなり、すぐに走り去っていく柑奈。 水鏡「…いや、前回もこの宿利用したからさ、あの子と話もしたから色々聞けるかと思ったんだよ…。別に俺が何かしたってわけじゃ…。でも、あの子の反応あからさますぎるな。絶対なんかあるぜ」 凹んで言い訳を始めた水鏡だったが、すぐに気を取り直してあの子が去っていった方を見る。 そこは客室の一室で、ノックをして中に入って行くのを見た。 水鏡「埠はいるみたいだな。まあ悪いことは言わないぜ、あんまりあいつらに関わるなよ。埠と砂金はともかく、残りの二人は評判悪いしな。…さて、俺もそろそろ調査に向かうか」 水鏡は席を立ち、貴方達に別れを告げると港の方へと去っていった。 (※失踪した恋人の手がかりの進行度が+1された) (※三段岬へいけるようになりました) 向坂維胡琉:HP550/MP250OP10/状態:普通/依頼P:50 白神凪:HP530/MP125/OP20/状態:普通/依頼P:50 月宮香蓮:HP500/MP350/OP10/状態:普通/依頼P:50 依頼P内わけ: 別チームが依頼達成(100p÷2=50) 合計:50p 戻る
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/71.html
NPC一覧 ※水鏡流星・鎮守由衛は4UトップページのNPC紹介をご確認ください。 喜屋武健(きゃんたける) 漣島出身の16歳の現Eクラスハンター。 本土(漣島からみたらそう呼ぶ)での生活が長く、6歳の頃に家族と本土に引越したため、10年ぶりの帰郷となる。 神風学園出身ではないため、新米も新米で戦力的には役にたたないだろう。 美馬小恋(みまここ) 健の彼女で、神風学園大学部1年のEクラスハンター。 高等部から神風に通っているため、積極的に依頼を受けてはいないが実力は彼氏の健より遥かに強い。 ちなみに健とは蒼ギルドに依頼で行った際に出会い、一目惚れした。 小此木剛毅(おこのぎごうき) 大和に現在4人いるAクラスハンターの一人。 『雷神』の異名を持ち、高精度・高威力・広範囲の雷撃を得意とする。 性格は自分勝手で面倒臭がり屋、歯ごたえのある戦闘さえできれば特に他の事はどうでもいいという性格ではあるが、知能や状況判断能力なども高いため依頼の解決率も高い。 砂金美作(さがねみまさか) 茜所属のDクラスハンター。 菅野楊弘(すがのようこう) 茜所属のCクラスハンター。 小此木の金魚のフン。 埠洋次(はとばようじ) 蒼所属のDクラスハンター。 大城太平(おおしろたいへい) 漣島の長を務める初老の男。 思慮深く虫など殺せないような優しい顔立ちをしている。 双三思永(ふたみしえい) 学者風の容貌をした元ハンター。 漣島出身でもある。 番場佑(ばんばたすく) 栄命島出身の祖先を持つ男。 筧利通(かけいとしみち) 漣村の漁師の一人。 気風のいい男性で、誰にでも優しく犯罪なんて犯さないような爽やかな好青年。 民羽六三郎(みわろくさぶろう) 宿酒場「民羽」を娘の柑奈と二人で切り盛りする無口な中年男性。 宿酒場「みわ」だと可愛くないと柑奈に指摘され、「みんう」とした経緯がある。 戻る
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/58.html
1 栄命島海上。 とは言っても、既に島は海の底へと沈んでしまっている。そのため、遺跡がある海上と言った方が正しいだろう。 喜屋武「僕が案内できるのはここまでです。あとは皆さんの無事を――」 最後まで言い終わるうちに、辺りにクラゲ型魔物、エビ型魔物が浮かんでくる。 漁船を壊そうと、ハサミを繰り出したり毒針で船底を攻撃しているようだ。 喜屋武「うわあ!だ、大丈夫!こういった魔物用に、結構しっかりした造りですから!」 それを聞いた貴方達は、安心して海上へと飛び込んだ。 魔力がかかった道具、水空輪(すいくうりん)。 輪をはめた者の魔力に反応し、体全体を酸素の膜で包む道具だ。 酸素の膜で包まれているため、携帯などでのやりとりも可能という優れモノである。 数ヶ月前に飛鳥で実践活用されて以来、大和のハンターギルドにも今回の人数分以上の支援を受けている。 便利な道具ではあるが、その分『強力な魔力の持ち主』でなければ反応せず、ハンターカードの効果で魔力がブーストされた状態ではなければ、使える者は極僅かだ。 喜屋武「すごい、本当に酸素ボンベいらずだ…」 喜屋武が感心をしていると、戦闘が開始した。 まず、甚目寺禅次郎が剣技舞来を発動。 水中を奔る魔力の刃に合わせ、柳茜がジャッキへとフリーファントを発動。 ジャッキ一体を確実に仕留めるが、船を攻撃していたジャッキ達が一斉に茜と禅次郎へと水泡のマシンガンのような技で二人おw攻撃する。 すかさず雪華雷絶を発動し、水属性の攻撃を無効化した。 しかし、コーラルジェリーの攻撃に水属性攻撃はないため、同じく貴方達へと標的を変えたコーラルジェリーには雪華雷絶は対応せず、毒針を二人は受けてダメージと毒を負ってしまう。 間髪入れずに志島武生がフォートランを禅次郎、そして茜へと前線の二人にかけるが、水泡の弾幕を張りながら4体のジャッキが突撃してきた。 ダメージは受けないものの、水泡があちこちに飛び散っているため、視界が悪くなっていく。 禅次郎はフロイントで、先ほど倒しきれていないジャッキに止めを刺す。 毒の効果もあるため、武生のフォートランで間に合わないほどのダメージに麻衣がキュアをかける。 武生は茜へ彩雲を発動したが、風属性の効果のためこの場合は失敗と言えるだろう。 しかし気にせずに、茜はW4Uを発動しコーラルジェリーを2体を撃破。 なおも水泡の弾幕を貼られていたため、禅次郎は再度剣技舞来を発動し、水泡ごとジャッキ2体にダメージを与えた。 再度麻衣はキュアをかけ、全体を回復した。 まだ、敵はかなり残っているようだ。 喜屋武「大丈夫ですか!後続の船も後から来るので、一旦引いても構いませんよ!」 茜と禅次郎にかけられたフォートラン、全体にかかっていた雪華雷絶の効果が消滅した。 (※茜のフリーファントはW4Uの効果で継続します。次回アクション時は技能を+300した状態でお願いします。) 天瀬麻衣:HP500/MP75/OP10/状態:普通/依頼P:78 志島武生:HP500/MP150/OP10/状態:普通/依頼P:39 甚目寺禅次郎:HP500/MP40/OP10/状態:毒/依頼P:78 柳茜:HP550/MP125/OP6/状態:フリーファント継続中・毒/依頼P:78 依頼P内わけ: 魔物撃破4体(1p×4=4) └うち弱点撃破2体(2p×2=4) 回復4回(5p×4=20) 別チームが依頼達成(100p÷2=50) 合計:78p (※武生はアクション提出遅れのペナルティで、獲得依頼ポイントが半減します) 戻る
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/271.html
エピローグ~one year later…14~ 紅ギルド本部。 此処では三人のハンターが、する事も無くて暇を持て余していた。 「雨ですねぇ…」 「これからどんどん強くなるみたいです…。粥満のはーちゃん、大丈夫かなぁ…」 「確かに心配ですね。なんでも過去最大の台風だとか」 藤八沙耶、福良練、姫神紅葉(旧日野守桜)の三人は、ギルドの待合室でお菓子を食べながら外を眺めている。 見れど見れども雨は止まず、どころか徐々に強くなっていくようだ。 夏が近づいた今日この頃、色々な事件はあれど、自然災害は久しぶりだ。 しかもテレビでは、過去最大の勢力の台風と噂されている。 そのため依頼はあれど、優先度の低い依頼は紅ギルドの判断で、本日は中止になっている。 ちなみに沙耶は街中の外灯点検、練はベビーシッター、紅葉はむいむいの掃討だったが、全部中止だ。 「戻りましたー…って、三人揃って何やってるんだ?」 「あ!お帰りなさいしののの先輩っ」 「何もしていないのですー」 「びしょ濡れじゃないですか…今タオルお持ちしますね」 そこへ東雲直が依頼を終えて戻ってきた。 郵便局の依頼で、配達の協力の依頼だ。 台風という事もあり、今日は意外な所からの依頼も多い。 「サンキュ、日野守…じゃなかった姫神」 「どういたしまして。それにしても傘はもっていかなかったのですか?」 「いや、持ってったんだけどさ」 これ、とべきべきに折れた傘を見せる。 うわぁ、という声が広がり、今回の台風の雨風の強さを思わせるだろう。 「こんな酷い台風、初めてですね…」 「あ、フェルゼちゃんが言ってたんですけど、気象制御装置が無くなった影響もあるんじゃないかって…」 「え、そしたらこれって、俺達があの装置を止めちゃったからって事?」 濡れた髪をタオルで拭きつつ、直が練に尋ねる。 余り詳しく聞いてなかったのか、それは…と少し困っていた所に、思わぬ助け舟が出される。 「そうとも言えるし、そうとは言えねえぞ。遥か昔、気象制御装置が無いころの大和もこんなもんだったらしいし。まぁ気象制御装置のお蔭で安定したってわけだがな」 「佐治せんせー、タオルいる?」 「おう、くれ」 佐治宗一郎は、傘を畳む様子の義貴つつじと共に紅ギルドにやってくる。 慣れた様子で、給湯室から乾いたタオルを持ってきたつつじは「どーぞ」と佐治に渡した。 どうやら傘に二人で入って来たようで、佐治のデカい図体は入りきらず肩の辺りがびしょ濡れだ。 ちなみに傘はそれなりの形を保っている為、直のコンビニで買った傘よりは高級品なのだろう。 「いやあ濡れた濡れた。おう、侯はいるか?」 「いえ、侯ギルド長は外出中で、私達3人でお留守番をしていたのですよ」 「ああ、もう招集されたんか。だったらいい、とりあえず支部長は本部長の指示待ちで待機しときますかね」 「やっぱり台風ですか?」 指示待ち、という言葉に引っかかった練は、小首を傾げながら聞くと頷く。 紅の地図を取り出すと、大きめのテーブルの上に置く佐治。 「3カ所、赤くマーキングしてあるべ?そこの川が氾濫しそうだから、紅ギルド長にギルドメンバー借りようと思ってな。それと報告だ。学園近くの川以外は、紅ギルドの管轄だしよ」 「ちなみに、今日は学園は休校で生徒は休みやよ」 「だから人手が足りなくて、紅ギルドに来た…って事ですね」 「さすが東雲、呑みこみが早くて助かるわ」 そう言いつつ、ひいふうみい…と今この場にいるメンバーを数える佐治。 頭数に数えられている事に気づき、紅葉がいち早く佐治へと尋ねた。 「具体的にどのような対処を行うのですか?」 「土のうを積む…のは地元の消防団達がやってっから、とりあえず救助がメインになるわ。消防団の連中でも何とかできない水の流れを変えたり、二次災害が起きないように土砂等の撤去とかだな」 「…時間かかりそうな仕事になりそうですね…」 そこで呟いたのは、直だった。 時間を気にしているようで、どうしようか迷っているようだった。 彼の妻、旧姓一任梨都の出産が近いのだ。 既に近所の病院に既に入院しており、予定日も後数日だ。 「ああ、東雲は一任の病院行くのか。ご苦労さん、行っていいぞ」 「え、いいんですか?」 「何とかなるだろ。それにてめぇ、明日から依頼入れてねえだろ?ついててやんな」 「すみません、それじゃお先に!」 深く頭を下げると、直はつつじから渡された傘を受け取り、病院へ向けて駆けていく。 それを見ながら、佐治はため息をついた。 「近場っつっても落ち着かねえもんなんだなあ…俺様もそうだったわ」 「だからですか?佐治長先生、いつもより優しい感じがします」 「バーロー、俺様はいつでも優しいいいギルド長だっつの!」 直を見送ると笑って、ソファーへと腰掛ける佐治。 適当に缶コーヒーを(つつじに)買ってきてもらうと、ブルタブを開けて飲む。 すっかりくつろぎモードだ。 とりあえず人数集まるか侯が戻るまで待機、との命令通り、全員紅ギルドで待機していた。 「そういえば、藤八。エストレアと会ってきたんだろ?なんつってた?」 「禅次郎先輩と行ってきた時の事です?」 「それ以外に何があるんだよ…もしかして何回も行ってんの?」 「いえ、一度だけですよー」 じゃあ最初からそれ言えや!と怒声を放つ佐治の大声に、全員耳を抑えつつ沙耶は語り始める。 ☆ 一ヶ月程前だっただろうか。 沙耶は甚目寺禅次郎と共に、エストレアのいるユグドラシルの大樹へと訪れていた。 禅次郎がエストレアに呼ばれて紅に来た時に、沙耶も連れて異次元にあるユグドラシルの大樹へと一緒に向かったのだ。 ―来たか― 「お久しぶりです、エストレア」 「お久しぶりです」 禅次郎の隣で、同じようにエストレアに挨拶をする沙耶。 目の前には、一つ目の竜が大樹の側で寛いでいた。 そして、その周りには今となっては失われた、エストレアの眷属の6体が。 ―今日呼んだのは他でもない、最後のお別れを言うためだ― 「え?最後、ですか?」 「い、いきなりですね…」 一呼吸置き、エストレアは瞳を閉じた。 そして、ぽつぽつと語り始める。 ―既に悪魔の残党しかいなくなったこの地で、私が手を貸す事ももう既にあるまい― ―ならば、アドラメレクの言うように、後は人の手に任せる。私は、再びこの大陸に悪魔の脅威が訪れた時、目覚めるとしよう― ―何百年、何千年、もしくはその時は来ずに未来永劫、この異次元の大樹にいるかもしれんがな― 「…寂しくないんですか?」 ―心配はいらん。お前達が悪魔を潰すために尽力している限り、私はいい夢が見れるのだから― 「とことん悪魔嫌いなのですね…」 ―それは当然、そのために造られたのが私だ― そうですか、と二人はエストレアに返す。 突然の事で言葉が見つからなかったが、それを見越したのか転移するように、6体の者達がやってきた。 巨大な黒衣の骸骨、D189。 銀獅子、ネメア。 金色の巨鯨、ゴルディアス。 炎の狼、ラー。 風の属性の巨大ゴーレム、風神魔鋼兵。 そして人型のカエル、自来也。 「既ニ我ラモ悪魔ト共ニ、コノ世ニハ必要無キ存在」 「エストレア様が眠るならば、我らも同じように眠りにつくことになる」 「長き長き、夢の中へ」 「宿主に挨拶できないのは、ちと寂しくはあるがな」 「シカシ、既ニ時間モナイ」 「そう考えると、俺だけ宿主に会えたのは幸福なのかもしれないな」 6体の召喚者達の中で、自来也が禅次郎の前に来る。 そして、握手を求め手を差し出してきた。 禅次郎は迷わず、その手を握りしめる。 「お疲れさんだったな、善次郎」 「自来也も…あまり使ってあげられなくて、すみません」 自来也は、その返答にゲコゲコと笑う。 彼らの体と共に、エストレアと大樹のある世界が白い光に包まれていった。 「ありがとう、エストレア」 ☆ 話し終えた後、スッキリとした顔の沙耶に、佐治は目つきを鋭くさせる。 「おい、藤八。てめぇ何しに行ったんだよ!せめて『今までありがとう!貴方の事は忘れない!』とかヒロインっぽいこと言ってこいや!」 「なっ、失礼な!最後にきちんと挨拶しましたよー!」 「えっ、まさか回想の時の最後のアレって…」 「甚目寺じゃなかったんかや?」 衝撃の真実に、紅葉を除いて驚く3人。 「はい、お茶を淹れましたからどうぞ」 「もりーさん有難うございます」 「沙耶先輩、もう日野守では…」 「ではがみーさん?」 「…いえ、もうなんでもいいです…」 諦め気味に笑うと、紅葉は自分の分のお茶を取る。 佐治が一気に飲み干すと、まるで修学旅行かのように話を振った。 「おう、じゃあ次は福良な」 「ええっ!?私、特に話なんてありませんよぅ~…」 「六角屋と付き合ってんだろ?電話しろ電話」 「佐治先生最低ですね…」 ええ~…と困った顔をしていると、ちょうどタイミングよく練へと電話がかかってくる。 発信者を見ると、六角屋灼の名前が。 おお~!と歓声をあげる沙耶と佐治とつつじ。 「出なくていいんですか?」 「う、うん出るけどっ…」 出ていいのかな、と呟きながらも紅葉に促された練は、周りの期待の眼(主に佐治だが)に小動物のように怯えながら電話に出る。 「あ、あら「はい六角屋残念でした俺~!」あっ、佐治長先生辞めてくださいよぅ~!」 『いい歳して何やってんすか…』 電話に出た練の携帯電話を取り上げた佐治は、言いたい事だけ言って練へと返した。 灼の呆れた声は聞こえなかったのが幸いだろう。 聞こえていたら、佐治がキレて更に厄介な事になっていたからだ。 「どうしたんですか?あれ、今日って休みの日じゃ…?」 『いや…藤咲がネットで見せてくれた紅の様子が酷かったから…。そっちは出動掛かってないのか?』 今日は全国各地で、手の空いているハンターはいつでも出動できるように待機してるんだなあ、と思いつつ、練は待機中である旨を伝える。 そっか…と呟くように言った後。 『葵は崖崩れがあちこちで起きてるから、今向坂さんと一緒に、藤咲の指示で動いてる。その、そっちも気をつけろよ…?』 「…はいっ。あらたさんも気を付けてくださいね?」 分かってる、と返してきた相手に、嬉しそうな顔をしている練。 が、すぐに周り(主に佐治)の眼に気付くと、慌て始める。 「あ、そういえば沙耶先輩もいるんですよっ。代わりますね!」 「えっ、練さん?!」 押し付けるように渡された携帯電話に、一瞬戸惑いの顔を見せたが、すぐにコホンと咳払いをする沙耶。 「おお、六角屋。久しぶりであるな。なんか志島を見かけぬ気がするが、近頃会ったか?」 『あいつなら、また西大陸に行くために飛鳥の港にいるらしいっすけど…』 「ふむ、志島も頑張っているんだなあ」 そうすね…と返され、沈黙。 佐治がたまらず「もっと他の奴の話題を振れ!」と、沙耶に助け舟を出す。 しかし、他に出す話題も特に思いつかない。 「むむむ…」 『六角屋くん、B-32エリアで崖崩れが発生!私達の受け持ちだよ。急ごう!』 『あ、了解…。それじゃ切るから、練にもよろしく伝えといて…』 遠くで向坂維胡琉の声が聞こえたと思ったら、どうやら出動のようで灼に電話を切られる。 「なにがむむむだ!」と佐治から批難されていると、佐治と紅葉、練の携帯が同時に鳴った。 練と紅葉はメールのようで、携帯電話のメールボックスを確認する。 「お、侯からだ。…おう、俺だ。今?紅ギルドにいるんだが…何?」 「大変です!ハナちゃんからメールで、粥満のリニアがストップしたって…!」 「このまま、はーちゃんは粥満ギルドで待機するそうですっ」 「…蒼は人手が足りないみたいで、紅から蒼に向かってるハンターも向こうで活動を続けるみたい。紅の交通機関も止まったらしいから、他にギルドに戻ってくる人はいないかもしれんね」 「侯らも粥満ギルドに缶詰らしく、そっから指示を出してるみてえだな。とにかく、俺達も出るぞ!紅の被害状況と対応を送ってきやがったから、俺達で何とか対処しなきゃならねえ!」 タブレットを見ながら、つつじが佐治に伝えるように言う。 佐治は頷くと、面々の顔を見て考え込む。 「やっぱりさっき俺様がマーキングしてた三カ所がヤバいらしいんだわ。 で、義貴の臨時ギルド員バイトはここで打ち切るから、俺と共に三好町へ向かう。 一番距離が遠いから、俺のバイクでぶっ飛ばしていくぞ!」 「…りょーかい」 要するにこんな雨風が凄い中、バイクで二ケツという事らしい。 他の者も心配そうに見ていたが、「何とかなるよ」と余り芳しくない表情で応えるつつじ。 「それよりも、なんで佐治先生と一緒にいるのかと思ったら、義貴先輩も依頼だったのですねー」 「おう、神風支部は来年で潰れっから、ギルド員とか週2で紅ギルドから頼んでんのよ。知らんかった?」 「は、初耳です…。あ、じゃあ私もその依頼を…」 「福良はダメだ、ガキ共にいいように言いくるめられる」 「そんなぁ」 少し笑い声が響き、緊迫した状況が和む。 気を取り直し、佐治が咳払いをして沙耶と紅葉を見た。 「藤八と日野守はここから一番近い淡嶋町へ。ダムが決壊して、地元の消防団が食い止めてるんだが、水棲系の魔物が出てるらしいんだわ。 消防団を守りつつ、魔物の排除がメインだな。ダムはどうしようもねえ、下手に水の流れを操作しようなんざ、二次災害になるからほっとけ。 幸い、ダムの下にある3軒の家の住民は、既に避難したみたいだしな」 「了解です!ではもりーさん行きましょう!」 「はいっ!」 紅葉と沙耶は、雨合羽を着こむとギルドから出て行った。徒歩でも20分の距離だ。 佐治達がバイクで1時間と考えたら、近いと言えるだろう。 「あ、あの佐治長せんせいっ…」 「おう、福良。てめえは一人で西蘂町って場所に向かえ。紅のギルド員が車をそこまで出してくれるらしいから、それに乗ってな」 「私一人です…?」 「安心しろ、東雲にも来れたら来いってメールいれてっから!川が氾濫してっけど、西蘂町に先に向かったハンターのお陰で被害が最小限でおさまってるらしい。てめぇはとりあえず怪我人の救護と、避難場所になってる教会には子供がいっぱいいるらしいから、てめぇが適任だろ」 「は、はいっ…頑張ります!」 「何かあったら、すぐに連絡してね」 緊張している練に、つつじが優しく声をかけた。 そして、すぐにギルド員がやってきて、練と車で現地に向かったのを確認すると、佐治とつつじも現地に向かうのだった――。 ◆義貴つつじ 異次元帰還後、紅ギルドに変わらず所属。 主に遺跡探索に興味を示し、よく城ヶ崎憲明と共に各地に出向いている(が、大和の遺跡のみ)。 紅では今回のように、神風学園支部の要請でギルド員の助手として手伝う事も。 恋人と変わらず同棲している。 ◆佐治宗一郎 異次元帰還後、神風学園ギルド支部の支部長として働いていたが、アドラメレクの改編のせいか、予算的にもきつい神風学園支部の廃止が決定する。 最近のガキは神風出ても就職しかしねえ!と怒りつつも、ハンターがそこまで必要のない時代が来ているのかな、と少し嬉しくもあったり。 支部長解任後は、引退も考えていたがギルドのハンターとして復帰。 Aクラスハンターの一人として、他のハンターをけん引していく立場となる。 ☆ その日の夜。 淡嶋町では、ダムの上流の方で二人のハンターが戦っていた。 「もりーさん!八時方向に3、二時方向に2です!」 「了解です!やあっ!」 沙耶の天照大神の狼二匹も、子犬程度に可愛く劣化していたが、霊感少女ならぬ五感を高め、狼に周囲を走らせることにより真っ暗な周囲を把握していた。 紅葉は彼女の言う通りに、アサルトライフルを振るう。 銃撃がメインで、沙耶に近づいた魔物はブレードに切り替えて切断していくという戦闘方式だ。 「それで一旦最後のようです!もりーさんお疲れ様でした」 「いえいえ、沙耶先輩も。指示助かりました」 豪雨で視界が悪い中、お互いに笑みを見せたのはなんとなくわかった。 少し安堵をしつつ、その場で休憩をとる。 このダムの上流では、魔物避けの柵が今回の台風によって壊れ、魔物がなだれ込んでいるのだ。 1時間近く交戦を続け、やっと休憩。 豪雨での戦闘経験が薄い二人は、疲労も強く感じていた。 「はあっはあっ…」 「もりーさん、大丈夫ですか…?」 「はい、平気です…」 沙耶も疲労が無いわけではないが、実際に重たいライフルを振り回している紅葉の疲労は計り知れない。 沙耶は回復もできるわけではないし、既に回復なら休憩最初にオーラを自分に使っているのを見た。 それでも回復しないとなると、体力よりも精神的な問題だろう。 「そういえば、もりーさんは神風学園に行ったりしていますか?」 「え?…いえ、卒業後はめっきり」 「週に一度、もしくは隔週に一度のペースで神風学園高等部、天文部に茶菓子を届けてお茶をするのが習慣でして。そうしていたら最近、学園で妙な噂を聞いたのですよ」 「妙な噂、ですか?」 緩く頷き、沙耶は目を閉じる。 すうっと息を吸い込むと、彼女に狐耳と尻尾が生えてきた。 「最近、妖狐が出ると」 「明らかに沙耶先輩の事じゃないですか!」 「こうしている方が、第六感というんですかね、それが働くんですよー」 朗らかに笑いつつ、息を整える沙耶。 実際キュウビの特殊技は、今の彼女には数分しか持たない。 発動条件も変わり、持続性が無くなった今、彼女が紅葉のためにできる事は、少しの間だけでも雨を彼女にあてないことだった。 効果も大分変わったキュウビ中は、周囲に火の力の結界を生み出す。 絶系統の魔術と同じように、水の効果を防ぐ力が生まれつつ、沙耶の火属性魔術のブーストを行うのだ。 「沙耶先輩…有難うございます」 反応があったようで、狼が吠えている。 紅葉は礼を言うと、再びアサルトライフルを構えた。 沙耶が言わなくても、キュウビの力で周囲の雨が止んでいたため分かった。 いや、雨が止んでいたためか。 周りを既に何匹の魔物に囲まれている事が。 「ふう…いつでも行けます!」 「ファン九号として、此処だけは死守しなければ…。私達の日常を守りましょうっ!」 気合を取り戻した二人。 再びライフルを持ち暴れる紅葉に、辺りを感知しつつ、的確に指示を出していく沙耶。 そんな沙耶の携帯電話には、甚目寺禅次郎の先程届いたメールが入っていた――。 ◆藤八沙耶 異次元帰還後、大学部へと進学。ハンターはそのまま紅ギルドへ。 蒼の実家に頻繁に帰るようになったが、依然紅の叔父の木蓮神社から通っている。 怪異探知ができる自身の特性を活かし、甚目寺禅次郎の助けになっている事も。 最近の悩みは、天照大神の狼が成犬から子犬になってしまったこと。 ☆ 練は、西蘂町の川へと来ていた。 既に町の大多数は、高台にある教会への避難が完了している。 被害が出ないよう、辺りに結界も先に来ていたハンター、安土優が行っていた。 このままなら氾濫しても、民家の被害はあっても人的被害はないだろう。 「何か胸騒ぎがします…」 一人だからもあるだろう。 だがそれよりも、嵐の前の静けさと言ったように、何かハンターとしての勘が働いているのだろうか 「勘ってやつか。おそらく間違ってないぜ」 「はい…安土さんもですか?」 ああ、と頷くと安土は最後の符を町の入り口に張る。 今張っている符は、周囲100メートルの範囲に水を寄せ付けない符らしい。 それを等間隔で氾濫しそうな場所に張っていくことで、町への水害の被害を最小限に抑えるようだ。 「こういう時は何かあるもんだ。それがハンターの勘って奴さ」 「よくわからないですけど、なんだかこう…不安になってくるというか…」 話していると、突如轟音が響く。教会からだ。 「なっ――!?福良、急ぐぞ!」 「はいっ!」 二人が豪雨の中、全速力で教会まで駆けてくる。 するとそこには巨大なゴーレムのような魔物が出現しており、教会の壁を叩き壊していた。 「魔物!?どうやって入りやがった!?」 「…安土さん、結界張ります!」 言うが早いか、すぐに練は辺りに青い花を咲かせた。 常世の蒼花。 ダメージを軽減する効果の持つ結界を発動する。 ガンガン攻撃するゴーレムの攻撃を軽減はしているが、このままでは教会に避難した住民達が作ったバリケードはあっという間に破られてしまう。 安土はそれを阻止すべく、ゴーレムにハルバードで攻撃を始める。 「福良!後方から支援を頼む!」 「…はい!」 アドラメレクがいた世界ならば、あの頃の強さならばこんなゴーレムもすぐに倒せただろうが、今はそれがいない世界。 力もかなり落ちている。 このままではゴーレムがバリケードを破るのが早いか、安土が倒すのが早いか微妙な所だろう。 もし、こんな時に他の魔物が現れでもすれば…。 「シャアー!」 「グゲゲゲ」 「グルルル…」 「う、嘘…」 練が振り返ると、背後に無数の魔物がいつの間にか出現している。 クワガタ、カエル、狼と多種で大量の魔物だ。 本当に、いつの間に出現しているのか分からない。 こうも気配を感じさせずに、やってこれるものなのか。 「福良!俺がこっちを専念している間、お前はそこを何としてでも死守しろ!」 「は、はい!」 相手は雑魚魔物と言っても、余りにも数が多すぎる。 多勢に無勢。それでも、町の住民のためにやらねばならない。 「えいっ!」 魔力で生み出した鎌を振るい、近くの魔物を二体撃破する。 しかし、狼型の魔物は回避し練に反撃。 ダメージはそれほどでもないが、このままでは安土がゴーレムを倒す前に練が持たない。 もう一度鎌を振るい、今度は三体撃破した。 まだまだ大量にいる魔物の数体は、練の横を素通りし安土へと攻撃を始める。 「ッ…!」 「ああっ…安土さん!」 「バカ野郎!俺なんか気にしないで、そっちに集中しろ!」 そう、安土に向かった魔物を構っているうちに、魔物の大群の防衛ラインが押されてしまう。 そうならないためには、練が踏ん張らねばならないのだ。 だが、練には範囲攻撃が無い。 色々な特殊技が、改編と共に消えた今、こうしてソウルディスサイズで少しずつ倒すしかない。 …いや、一つだけ方法はあった。 「安土さん…!」 安土の返事は無い。 ゴーレムだけでなく、練が漏らした魔物の排除も行っているため余裕がないのだ。 練はきゅ、と唇を噛み決心したように息を吸い込む。 次の瞬間、鎌を自分へと振るい、結界の効果を消滅させた。 「福良!?」 ダメージ軽減効果が消滅した事に驚いている安土に、練は凛々しい顔つきで言った。 効果は以前と比べるとかなり落ちてはいるが、自分にも使えるようになった鎌。 それで魔力を回復した練は、大技の発動準備のため魔力を練り上げる。 「安土さん、倒しきれなかったらすみませんっ!白薔薇ちゃん…きて!」 練の体から魔力が抜けていき、限界以上の魔力放出のため練の体が持たずその場にへたり込む。 彼女の頭上には、白い薔薇に包まれた少女の姿があった。 言うまでも無くこの特殊技も劣化はしている。 だが、それでも。 「グアアア」 「ゴゲゲゲ」 「キャイン!」 巨大な剣閃が辺りを薙ぎ払う。 魔物だけを排除し、建物や安土には当たらず。 その一撃は全ての魔物を排除した。 「ハッ、根性見せたじゃねえか!」 「安土さん、後はお願いします…」 残るは、ゴーレムだけ。 この魔物だけ異常に耐久力が高い。 この魔物達のリーダー的存在なのだろう。 しかし、そんな魔物でも、何者かに動かされているような様子がある。 「ギョアアアア!」 「そ、そんな…」 「おいおい、マジかよ…!」 練の不安を煽るように。 再び大量の魔物が出現した。 そして、その中央に巨大な一つ目の化け物がいる。 この辺に棲息する魔物ではないその化け物に、練は見覚えがあった。 数人を殺害し、卒業式の後に行成ハナ、紅葉、祠堂統と共に戦い、倒したはずの悪魔の残党。 おそらく復讐しに来たのだろう、ゴーレムだけに任せ、他の魔物は練だけを狙っている。 『ゴエエエ』 「グルルルアア!」 「福良ァッ!」 一つ目の悪魔が指示のような言葉を発すると、練の周りの魔物が一斉に練に襲い掛かる。 安土はゴーレムで手いっぱいのため、そちらに手を貸すことはできず。 練が目をぎゅっと思い切り瞑った時、彼女の頭上から剣閃が放たれた。 「あ…」 「大丈夫か?福良」 「し、しののの先輩…!」 「っと、話は後だな!」 今にも泣き出しそうな福良の目の前に、直が駆けつけてくれた。 直は仕留めきれなかった魔物の攻撃を回避すると、魔力の刃を生み出し構えを取る。 その構えを見ても恐れず、勇敢で無謀な魔物達は直へと襲い掛かった。 「神剣流初伝、滅紫!」 横一閃。 襲い掛かってきた魔物を一掃すると、練へとすぐに符を張り付ける。 ダメージを防ぐ符だ。 「遅いぞ直!」 「すみません安土さん!背後は任せてください!桜御、安土さんの援護を!」 「任せたまえ!」 その声に、安土に加勢するべく縦一閃。 ハンターである桜御亮が駆け付けた。 「その代わり、そちらは任せるよ師範代」 「いや、それはもう返上したから!」 苦笑しつつ、直は次々に魔物を倒していく。 だが、悪魔がいる限り魔物は永久に生み出されるのだ。 「いい加減手伝ってくださいよ!」 直が悪魔の背後に向かって叫ぶ。 そこにはかつて悪魔だった女性、姫神桜が。 「フェルゼちゃんっ…!」 「よく頑張ったな、練」 泣きだしそうな練に微笑みかけると、桜は悪魔の眼に手を触れた。 「うっかり私も騙されてしまったよ。前に仕留めきれていなかったとはな。だが――今度は確実に仕留める」 眼から巨大な芽が出てきて、悪魔の体を瞬時に拘束。 続けて練と同じ鎌を生み出すと、その胴体を真っ二つに切り裂いた。 「直、せっかく連れて来たのだから、時間がかかりそうだから帰るというのは無しだぞ?」 「さすがにそんなことは言いませんよ…。一段落したら、病院に戻りますけどね」 「さて、では残りの魔物も片付けるとしようか!」 豪雨の中、ずぶ濡れになりながらも各地で奮闘するハンター達。 やがて台風も過ぎ去りった頃、佐治や紅ギルド長、侯の元には無事を知らせる連絡が相次いだという。 ◆福良練 異次元帰還後、紅ギルドに所属となる。 ギルドでも救護班所属となり、主に怪我人の救助や手当を扱う事になるため、暇な時はギルドの受付も無給で代わったりもしている。 沢山の人々と繋がりを作りながら、恋人の灼と共に少しずつ歩んでいく。 大体の技が使えなくなったものの、威力は劣化やかなり変わったが以前と同じ技名や発現描写の魔術や特殊技を復元する。 数年後には保育関係の資格も取り、紅ギルドに託児所も開設したいと思っている。 ◆東雲直 異次元から帰還後、紅ギルド所属のまま活動を続ける。 神剣流と符術のハイブリッドハンターとして有名になるが、奥さん一筋でこの台風事件の後、暫く育休で姿を見せなくなる。 が、その間も桜御道場には通い続けていたようで、今でこそ免許皆伝を返したので師範代の任を解かれたものの、いずれは再び神剣流の師範代に。 安土にも相変わらず符術を学んでいるため、ハンターに正式に復帰した後も大したブランクは無かった。 晩年はBクラスハンターにまでなるが、生涯紅ギルドから動かなかったためそれ以上になる事はなく。 一部のハンターからは「もっと積極的に事件に関わればAも夢じゃない」と言われていたが、本人は今のままで幸せをかみしめているようだ。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/108.html
イベントコンテンツ ストーリー概要 報酬 オープニング 1 貴方達は、かつてある事件でやってきた漣島で補給をし、そこから更に南東へと向かう。 途中、栄命島の側を通ると、貴方達の乗る軍船の操舵手である美澄少尉が声をかけてくる。 美澄「さて、こっから先は飛鳥の海域だ。俺が乗ってるから滅多なことはないと思うが、お前さんたちも気を付けな。 紫音の奴は、ハンターちゃんの事が嫌いだからな」 冗談だよ冗談!と豪快に笑う彼を横目に、海に吐いている一人の青髪の女性が青い顔で美澄を睨む。 女軍人「笑い事じゃありませんわ!どーして最前線の船にのっている軍人が、私と貴方だけなんですの~!うぉぇ…」 美澄「んなこと言われましても響中佐。貴女が私、響ルナリアは最前線が似合いましてよ!おーほっほっほ!てついてきたんでしょうが」 響「そんなこと…!だってもっと軍人だらけで優雅に海竜討伐クルーズになると思ったんですもの!」 美澄「紫音宰相代理に抱いてるその対抗心、どうにかならないんですかい?」 響「私、名門響家があってこその飛鳥。そんじょそこらのポッとデノメギツネなんかには、負けていられませんの」 美澄「格好つけてるところすいませんがね、ゲロ臭いんですわ」 響「ムキー!乙女になんてこと言いますの!?野蛮人!うぉぇ…」 言わんこっちゃない、と美澄が笑いながら言う。 なぜ前線に貴方達しかいないか、その理由は飛鳥の紫音宰相代理が言うには、大和との取り決めにより、大和の面々がまず潜り、その後飛鳥軍が潜るとのことだ。 それによる発見した物は、大和のハンターが見つけたものはギルドへ。飛鳥軍が見つけたものは飛鳥の所有物にするということで合意し、調査メンバーが少ない大和のハンターに先行させることで、飛大和のハンターが宝を発見しやすいようバランスをとっているらしい。 しかし、ここは飛鳥の海域。 手に入れたものの5割はギルドから徴収するということも言っているため、飛鳥軍がなにもしなくても、半分はもっていかれてしまうのだ。 不幸中の幸いなのは、その半分は先にギルドが決められるということだろう。 美澄「ま、ハンターちゃんにとっては納得いかんかもしれないが、これもお偉いさんの力不足って奴だな。神崎とかいう宮廷魔術師だったか、この件に関わってんのは」 響「ふん!田舎出の男程度、我が飛鳥の宰相になどかなうはずがないのですわ」 美澄「それ、紫音宰相代理を褒めてますぜ」 響「ああ~違うんですのよ!別にあの女が優秀というわけでは~」 と、その時美澄の顔つきが変わった。 美澄「どうやらおいでなすったようだぜ。…あれは…竜!?まさか最初から大物かよォ! なんとか逃げ切って、後方の軍船に押し付けるしかねえ!この船じゃああのバルガって化け物ですら、対処しきれねえ! 響中佐、怪我人の手当ての準備を…」 響「これは夢…竜なんて実際にいるわけが…きゅう」 美澄「このアマ気絶しやがった!お前さん達で怪我人の対処は頼むぞ!俺は操舵で手一杯だ!」 東海竜ウロボロス。その突然の出現に他の軍船も今ごろ驚いているだろう。 なんとか振り切り、先へ進む。海竜が座する地への航海は、むだまだ長いのだ――。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/77.html
1 日野守桜と天瀬麻衣は、二人で海岸沿いへと来ていた。 特になにかあるわけでは無かったが、海岸沿いでは二人の男が言い争っていた。 双海思永と喜屋武健だ。 双海「だから、よしたまえよ!君が行ってなんになる!」 喜屋武「止めないでください双海さん!僕がこっこを助けに行かないと…!」 双海「だから、今他のハンターが向かっているからそれに任せて…あ!君たちいいところに!手伝ってくれないか!」 貴方達はなんとか喜屋武をなだめると、話をきいた。 喜屋武「すみません、取り乱して…。わかってます、俺なんかが行っても足手纏いになるっていうのは…」 双海「あらら、落ち着きすぎて卑屈がこんにちはしちゃったようだね」 苦笑しつつ、喜屋武の頭をぽんぽんと撫でつつ、話をきいた。 双海「ランマーか。…話は聞いたよ、彼は邪神ランマーなんかに傾倒するような人間ではなかったのに…」 おそらく大城太平のことを言っているのであろう。 彼は沈んだ目をすると、話を続けた。 双海「僕も前村長に脅されて、仲間になった振りをして調査を続けていたんだが…。色々調査した内容は、彼、大城さんへと伝えていたから、何もかも筒抜けという訳か。 邪神ランマーの復活は、6人の生贄が必要とされている。 過去に阿久津由恵、虹原奥子、多江吉見、長良涼、そして田中まゆみの5名。 そして小恋ちゃんをいれると6人になるわけだ。 僕が以前、君達の仲間に終わった話のように言ったのは、ランマーのある祭壇は常人には気づかないような仕掛けをしていたからなんだ。 魔力探知、気配探知の影響を受けない仕掛けだから、気づかれはしないだろうと思ったが…その解き方は大城さんは知っている。君たちの仲間が間に合えばいいが…。 おそらく、雑貨屋タイショーに火をつけたのも彼らだろう」 貴方達は話を聞いていたが、それを聞いた喜屋武が再びやっぱり助けに行くと騒ぎ始めたので、それの制止に時間がかかってしまった…。 2 六角屋灼は田中まゆみの家へと来ていた。 しかし田中家は留守で、玄関には鍵がかかっている。 貴方が鍵を開けようとしたその時、背後から声がかかった。 菅野「おい、何しようとしてんだクソガキ!!」 出会い頭、菅野は貴方の頬を殴る。 貴方は玄関前から飛ばされ、尻餅をついた。 菅野「ハンターだろテメェは!んな事…」 と、その時彼らの背後から雷光が迸り、田中家の玄関を吹っ飛ばした。 小此木剛毅だ。 菅野「ご、剛毅さん…!」 小此木「あン?楊弘、なんか文句あんのか?」 菅野「い、いえ別に。さすが剛毅さんです!これは調査で仕方なく、玄関をこじ開けたんスよね!」 おべっかを使う菅野はどうでもよさそうに、中へと入る小此木。 菅野は一度、罰が悪そうな顔で貴方を見たが、そのまま中へと入っていった。 貴方は続いて田中まゆみの家へと入っていく。 中では綺麗に物が片付いており、まるで引越しした後のような家具の少なさだった。 小此木「やっぱりな。菅野、後は任せる。ドア元に戻しとけよ」 菅野「えっ!?剛毅さん!?無茶ですよ~!」 何かを納得したように言うと、小此木はその場から去っていった。 菅野はその言葉に焦り、共に逃げようとしたが貴方を見て立ち止まる。 菅野「何見てんだよ!ちゃんとこのドアの弁償はすっから文句ねぇだろうが!」 言うだけ言うと、今度こそ立ち去っていった。 田中まゆみの父は、もうこの家には戻ってこないつもりなのだろう。 それがわかっただけでも、貴方には収穫だったのかもしれない。 3 宿酒場 民羽 には、志島武生・蛇姫神紗咲良・寒河江由加の3人がやってきていた。 店主の民羽六三郎から話を聞くためだ。 六三郎「…」 彼は頑なに答えようとはしなかったが、せっせと布団干しを始めた娘の柑奈を見て、観念したように口を開く。 六三郎「俺の知っている事は少ない。だが、柑奈や集落の若い者は何も知らない。若い奴に余り嗅ぎ回られても困る。だから俺の知っていることを話そう」 ひと呼吸おいて、ぽつりぽつりと六三郎は話を始める。 六三郎「俺の父は、長老会の一人だった。 俺は何も聞かされてなかったが、おそらく大体の話を父は知っていたのだろう。 父は高齢で、長老会も死ぬ翌年に俺に譲るつもりだったらしく、その時話していたことだ。 『六三郎、お前が長老会に入る前に一つだけ言っておく。村長には逆らうな。 村長には魔物が憑いておる。あの村長も元は優しく、朗らかな人柄じゃった。 じゃがいつの間にか、村の掟に縛られ、恐怖し、そして魅入られた。 おそらく、邪神ランマーと関係があるのかもしらん。 じゃから村長には絶対に逆らうな。逆らえば、次の生贄は柑奈じゃぞ』 とな。俺も詳しくは知らんが、柑奈も薄々は勘づいているのだろう。 まゆみちゃんと友達だったあの子だ。おそらくはな」 他のことを聞いても、よく知らなさそうなこの人に後の話を聞いても無駄だろう。 なんせ貴方達ハンターが滞在してから、他の客足はどんどん減り、この日は他の客が一人も来ていないのだ。 店から離れられない彼や柑奈にとって、情報も入らなければ外に殆ど出ることもないのだ。 「ククク…無知な者め…」 その時、背後から声がかかる。 振り返ると、貴方達の後ろに黒尽くめの男が立っていた。 一歩間違えれば変質者と見間違うような陰気な顔をした男だったが、この男が埠洋次だと貴方達は確信した。 埠「結局の所、お前達は水中で宝探しをしていればよかったのだ…。 余計な事に首を突っ込み、俺たちの本来の目的を妨げて…。 まあいい…。結局の所、全てはお前達が嗅ぎまわったせい…。 全ては余計な事に首を突っ込み、俺たちの本来の目的を妨げたせいだ…。 ヒヒヒ…結局の所、全て丸く片付きそうな気がするし、今回はお前達に華を持たせてやってもいいがな…」 少し雰囲気がおかしいのが彼の特徴のようで、貴方達の質問は無視し、一方的に語ると六三郎へ金を払った。 埠「俺達は一足先に蒼へ帰還する。結局の所、後輩に華を持たせてやる、というわけだ…」 どうやら別れの挨拶のようで、埠は港の方へと行ってしまった。 俺達、というように、六三郎の話によれば小此木、菅野、砂金の3人は既にチェックアウトしているようだ。 結局の所、彼らが何をしていたかは憶測に頼るしかないが、村長の大城の逮捕は貴方達に託したということでいいのだろう。 4 村長の家に一人できた桜木有布だったが、特に何かあるわけでもなかった。 家宅捜索しようにも、村長の妻がどっしりと構えていたからだ。 村長の奥さん「ちょっとあんた!あたしの依頼は達成できたのかい!?あの人もどっか行っちまうし、困ったもんだよ」 貴方は奥さんに長老会のことについて聞いた。 知らないはずがなく、少し考えてはいたが、彼女は貴方に話をしてくれた。 村長の奥さん「あたしもここの生まれだけどねえ、あの会は無くなってよかったと思ってる。 亡くなった人には申し訳ないけどねえ、一家から一人あの会に強制的に出させて、責任を共有して逃がさないようにしてるだけの会だったしねえ。 責任?そりゃああんた、アレだよ。この村が過去に起こした罪…ってやつさ。 皆まで言わせんじゃないよ! …そういえばあの人、どこ行ったんだろうねえ。あんた、大城太平を見かけたら、飯が冷める前に帰ってきて食いな!って言っといてくれ!」 どうやら彼女からこれ以上の情報は得られなさそうだ。 挨拶して貴方は村長の家を後にした。 5 漣港には、甚目寺禅次郎、桐石登也、祠堂統、加賀見皐月、東雲直の5名がいた。 統は最初に、一番はじめに来た時に感じた気配を探ってみたが、特に何ももう感じない。 超感覚を持っている彼が探知できないということは、おそらくその気配は既にここにはないのだろう。 漁師の男「おいおい、前回より少ないが大丈夫なのかい?」 しかし彼の心配は他所に、貴方達の漁は無事成功し、大漁だった。 漁師の男「ファンタスティック!これで暫く魚料理にことかかないぜ!俺っちも大満足さ!」 詳しい話を聞ける時間はなく、また不審な船を見ることもなかったが、長く続いた漁の依頼はなんとか成功することができた。 天瀬麻衣:依頼P:490 加賀見皐月:依頼P:520 桐石登也:依頼P:520 寒河江由加:依頼P:380 桜木有布:依頼p:275 志島武生:依頼P:369 祠堂統:依頼P:325 東雲直:依頼P:541 甚目寺禅次郎:依頼P:479 日野守桜:依頼p:330 蛇姫神紗咲良:依頼P:380 六角屋灼:依頼P:380 依頼P内わけ: 別チームがシークレット達成(50) 依頼・漁の手伝い達成(港チームは150、それ以外は150÷2=75) 別チームが依頼・魔物の生体調査を達成(100÷2=50) 別チームが依頼・揺らぎの炎を達成(200÷2=100) 合計:275p 合計:350p(港チーム) 戻る
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/264.html
エピローグ~one year later…10~ 4月下旬。 桜がほぼ散り、新緑がぽつぽつと色づき始めるこの季節。 帰国した入生田宵丞は、葵にあるテレビ局へとやってきていた。 受付に来ると、誰を呼び出すでもなく受付嬢にちょっかいをかけていた。 「ばめ、出雲ぶりー」 「あれ?りゅーじゃない。桃李達に用事?残念でした、まだリハーサル最中で一般人はお会いさせることはできませーん」 親し気に宵丞が声をかけたその受付嬢こそ、土御門伍代のコネでテレビ局の受付嬢へと転身していた燕沢凛桜である。 しかしここで働いている事を宵丞は知っており、凛桜もまた、彼をはじめとした他の者ともプライベートで偶に会っているためか、そこに再会の感動はない。 「受付さーん」 「そっかー。じゃああらたの方に、近くのカフェで待ってるって伝えておいてくれる?出雲土産あるのよ」 「てゆーか、『出雲ぶり』って私出雲に行ってないんだけど」 「シズモがそう言っといてって」 「は?…意味わからないんだけど。あ、りゅーちょっと退いてて」 相変わらずの鎮守のつかめなさに脱力したのもつかの間、他の客が来た途端に宵丞を横へ追いやり、笑顔で客の応対を始める凛桜。 土御門で働いていた経験や茜のメイド時代の経験が活きているのか、応対も手慣れたものだ。 一通り客を捌ききると、再び会話にもつれ込む。 昼過ぎのこの時間帯は、意外と人の出入りは少ない。 そのため暇な事も多く、宵丞もそれをわかって話し込んでいた。 「話は聞いてたけど、スーツ姿のばめって見慣れないな」 「私も~。伍代様が紹介してくれたのはいいけど、メイド服の方が着慣れちゃってるわねー」 「でも央なら、写真とか撮りそうだけど」 「なんなら今度同窓会でもする?しずもりんも元気そうだったし――」 「受付さーん!!」 その時、今気づいたように凛桜が視線を横へ向けた。 宵丞もつられるように視線を向けると、桜木有布が少し怒ったような顔をしていた。 「…なによアル。ちょっと待っててって言ったでしょ」 「桜木いたの」 「いたよ!トイレ行ってたんだよっ!」 「あー、どうりで最初見なかったわけだ」 俺の方が先に来てたのに、と不満気に語る有布を宥めていると、宵丞はある人物がエレベータで降りてくることに気が付いた。 そして相手も気づいたようだが、特に挨拶する事無く受付を通り過ぎる。 用事があったわけでもなかったが、「深海さん」と声をかけたら、彼は立ち止まった。 「お前か」 「依頼ですか?」 「いや、仕事。」 「どう違うんすか…」 凛桜がちょうど客の応対を始めたため、少し離れた所にいる三人。 有布が最後にツッコミを入れたら、将己は目を一度瞬かせる。 「こいつ誰?」 「あれ、深海さん知らないでしたっけ」 「俺も知らないけど…」 そういやいなかったか、と12月末から続いた異次元での事件に、有布がいなかったことを思い出した宵丞。 将己が知らないのも当然だが、元より彼はいなかったのだ。 有布を将己に紹介したが、彼は「ふーん」とあまり興味をもってはいなかった。 「えーっと、深海さん?依頼じゃなくて仕事なんです?」 「ああ。意外に食いつくなお前」 「ハンターは辞めたんですか?」 「葵ギルドに所属してる。もうほとんど受けてねーけどな」 「へー、俺は紅ギルドなんすよねー」 「そうか」 あまり話が噛み合わない有布と将己。 将己にとって、知り合いでもなければ利益も興味も引く要素が無い有布。 有布にとって、接点がハンターという肩書のみという将己。 どうしたものか、と困っていたら将己の携帯電話が鳴りだした。 「ちょっと悪い」と携帯電話に出て通話する。 その通話時間は短いもので、用件だけ伝えると腕時計を確認した。 「知り合いですか?」 「まーな。時間だし、行くわ」 「お疲れ様です」 「ああ」 そう言ってターミナル方面へと、立ち去る後ろ姿を見送る有布達。 と同時に、ふとした疑問を隣の宵丞にぶつけてみた。 「そういえば、深海さんって何の仕事してんだ?」 「…なんだろ」 首を傾げる彼に、「知らないのかよ」と呆れた笑いをしながら、既に目の前にいない将己の姿を眺める二人だった…。 ◆燕沢凛桜 異次元帰還後、土御門伍代の紹介で葵の有名テレビ局の受付嬢として働き始める。 桜木有布とは、異次元帰還後に呼び出し互いに告白し付き合う事になる。 喧嘩をする度「あーあ、伍代様は優しかったのになー」と挑発していたせいか、彼が土御門によからぬ感情を持っている事には気づいていないようだ。 ◆桜木有布 改編後の世界でも、特に変わったことは無かったハンターの一人。 1年前くらいに凛桜に呼び出され、互いに告白し付き合う事になった。 が、付き合っても劇的な変化は無く、彼の恋は前途多難。 ☆ 「はい、オッケーでーす!」 「お疲れ様でしたー!」 「…お疲れっす」 王貴桃李、六角屋灼はそれぞれギターとベースを置き、近くにあった飲み物を手にする。 葵のテレビ局でのスタジオ収録が終わり、彼ら二人のバンド、Iris+の今日の活動は終了といった所だ。 「灼、この後予定は?」 「…あ、俺ちょっと用事があって」 携帯電話にメールが入っていたので確認すると、すまなそうに桃李に言う灼。 画面を見ると、入生田宵丞、甚目寺禅次郎、義貴つつじや福良練からメールが入っていた。 当初は彼らに会う用事…だったのだが、現在の用事とは一番最後に来ているメールだ。 差出人は藤咲真琴。 元、灼と同級生という事だったが、灼と一度も会話をしたことがなかったため、本格的に交流を続けているのはハンターになってからという奇妙な関係である。 そんな彼から送られてきたメールの内容は、灼の期待した通りの内容だった。 藤咲に電話をかけると、ワンコールで彼は出た。 『遅いよ六角屋。メールは見たんでしょ?』 「…見たけど…この情報は本物?」 『90%って所かな。僕、1時間前にメール送ったはずなんだけど』 「…悪い、収録中だった…」 電話の向こう側からため息が聞こえる。 『だから移動した可能性があるから90%』とトゲのある言い方で言われつつ。 『一旦うちに来なよ。もう一回サーチかけてみるからさ。この後用事ないんでしょ?なんだったら金髪の先輩も連れてきていいし』 「って言ってますけど…」 「じゃあ俺も行こうかなっ」 灼が他の者達へ、今日は無理、とかまた後日でいいか?とか返信している途中に桃李からの返事。 一旦携帯電話を上着の中へと入れ、頷いたら二人とも立ち上がる。 そして藤咲真琴の家…彼の場合、自宅が仕事場となっているのだが、そこへ向かおうとした時だった。 「桃李くーん、2時間後に紅でライブあるんだけどー」 「げっ、マネージャー…!」 「うわ、出たよ…」 立ち塞がるように、上条森羅が立ち塞がった。 今の彼は土御門邸から追い出されたものの、土御門伍代のコネにより大手芸能事務所にマネージャーとして潜り込んでいる。 王貴桃李のマネージャーは、伍代から受けた絶対条件として仕方なく請け負っているが、それ以外はプロデューサー兼務で、この1年で15人のアイドルを輩出してきた。 そこだけ見れば敏腕プロデューサーだ。そこだけを見れば。 「僕だってさっさと他の子の様子見に行きたいから、さっさと移動してくれる?」 「あ、じゃあ30分だけ行って、それから急いで紅に向かえば…」 「却下。今すぐに。タクシー待たせてあるんだから、早くしてよ」 いつも以上に険しい表情の上条だったが、やっぱり男のマネージャーは気に入らないらしい。 仕方ない、とがっかりした様子でギターをケースに入れて、持ち上げる。 「ごめん、また今度ってことで!次は1週間後だっけ?」 「そうですね、桃李さんも気を付けてください…」 「はやく!待たせるんじゃないよ!」 「灼もね!じゃあまた!」 慌ただしく走り去っていく桃李に手を上げて見送ると、灼もその足でテレビ局を出て、藤咲の家に向かうのだった――。 ◆王貴桃李 異次元帰還後、芸能事務所にスカウトされる。 鎮守由衛とは偶に連絡を取り合ってはいるものの、最近は仕事が忙しくなり頻繁には連絡をとれてはいない。 六角屋灼とのバンド、Iris+だけでなく、彼個人も人気アイドルとしてテレビで引っ張りだこである。 この夏から始まる情報バラエティで、レギュラーを獲得し忙しさが落ち着くどころか増す日々だ。 ◆上条森羅 異次元帰還後、土御門邸から追い出した伍代に泣きつき、何とか職を手に入れる。 そこで自由奔放にプロデューサーとしての再起を図っていたが、伍代の策略により王貴桃李のマネージメントを行う事が必須となり落胆中。 しかし断れば自分のクビなど、土御門の財力と影響力を持ってすれば簡単に飛ぶので、今は大人しくいう事を聞いている。 仕事はそれなりにできているものの、桃李の甘いマスクに惚れた女性スポンサーには「歳考えたら?ブス」等をはじめとした暴言がまずとぶため、過度に華やかな仕事はまず来ない。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/250.html
魔物詳細第六階層C・試練の階層 ※☆はレアモンスター、▼はエリアボスとなる。レアモンスター撃破で煌石+1、エリアボス撃破でエリア攻略となり、攻略したメンバーに報酬が入る。 ※●印のエリアは、◆のエリアを全て攻略しないと進むことができない。 ※攻略済みの場所は、エリアボスが出現しなくなり、報酬も得ることができなくなります。 ※攻略後の場所への再探索は、エリアボスの代わりに通常魔物が1体、ランダムでエンカウントします。 漣村(攻略済み) 蒼の南西にある小さな島の村。 BOSS1:美馬小恋・喜屋武健 BOSS2:双海思永 必須メンバー:東雲直 攻略メンバー第一回:桐石登也・東雲直・祠堂統・鬼ヶ原空 西蘂町(攻略済み) 紅の西に位置する、小さな町。 BOSS:安土優・東絛慶介 必須メンバー:東雲直 攻略メンバー第一回:桐石登也・東雲直・日野守桜 特区ギルド(攻略済み) 蒼特区ギルド。 BOSS:大門・白銀汽水 必須メンバー:東雲直 攻略メンバー第一回:烏月揚羽・東雲直・志島武生・神崎信(同行者) スラム第一エリア(攻略済み) 裏路地と繋がっているスラムの第一エリア。 BOSS:灰原 必須メンバー:鬼ケ原空・幸村カヤ・水鏡流星(同行者) 攻略メンバー第一回:福良練・鬼ヶ原空・幸村カヤ・水鏡流星(同行者) 神風学園高等部(攻略済み) 神風学園高等部錬武場。 BOSS:東十常司・櫻井六花 必須メンバー:藤八沙耶・福良練 攻略メンバー第一回:藤八沙耶・福良練・祠堂統・鎮守由衛(同行者) 神風学園大学部(攻略済み) 神風学園大学部正門。 BOSS:城ヶ崎憲明 必須メンバー:藤八沙耶・志島武生 攻略メンバー第一回:白神凪・桐石登也・柳茜・天瀬麻衣・日野守桜・向坂維胡琉・藤八沙耶・志島武生 ◆茜ギルド(攻略済み) 茜ギルド訓練場。 BOSS:塚田マキ・白鳥礼二・新城抉 必須メンバー:柳茜・幸村カヤ 攻略メンバー第一回:柳茜・板垣勝猛・幸村カヤ・風見次郎(同行者) ◆紅ギルド(攻略済み) 紅ギルド訓練場。 BOSS1:厨二の鯨波・むいむいX BOSS2:桜御亮 必須メンバー:桐石登也・東雲直 攻略メンバー第一回:桐石登也・東雲直・鬼ヶ原空・風見(同行者) ◆スラム第2エリア(攻略済み) スラム第一エリアの先にある第2エリア。 BOSS:槐志渡・尸黄泉 必須メンバー:鬼ケ原空 攻略メンバー第一回:白神凪・柳茜・鬼ヶ原空 ◆葵ギルド(攻略済み) 葵ギルド訓練場。 BOSS:藤咲真琴 必須メンバー:六角屋灼 攻略メンバー第一回:白神凪・六角屋灼・福良練・風見次郎(同行者) ◆神風学園ギルド(攻略済み) 神風学園ギルド訓練場。 BOSS 佐治宗一郎 必須メンバー:藤八沙耶・風見(同行者) 攻略メンバー第一回:藤八沙耶・柳茜・天瀬麻衣・福良練・風見次郎(同行者) ◆神風学園地下区画≪ソラリス≫(攻略済み) 神風学園地下にある秘密施設。 BOSS 氷川仁・大林幸太・紫堂陽人 必須メンバー:幸村カヤ 攻略メンバー第一回:桐石登也・鬼ヶ原空・幸村カヤ・臥龍ヒアデス(同行者) ●エリア45(攻略済み) 蒼特区の北西にある草原エリア。 BOSS:小此木剛毅・天城宗次郎 必須メンバー:烏月揚羽・桐石登也 攻略メンバー第一回:烏月揚羽・桐石登也・幸村カヤ ★葵地下研究所(攻略には第六階層Cのエリアを全て攻略している事) 挑戦回数 報酬 1回のみ 小此木剛毅IN(同行者) エリュシオンを開発していた、土御門家のラボ。 BOSS:零 必須メンバー:神崎信(同行者) 攻略メンバー第一回:
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/155.html
8月18日、午後22時。 深海将己は、城ヶ崎憲明と共に変死事件の調査に蒼まで来ていた。 正確には城ヶ崎とは葵ギルドで一緒になって、そのまま蒼まで異次元のポイント調査に付き合わされて、変死事件の調査依頼を蒼ギルドから依頼されて請けた形となる。 事件現場から30分程でついたため、蒼ギルドから向かうよりも近かったのだ。 貴方達は釣りに来ていた山田太郎(やまだたろう)という男から話を聞いていると、蒼ギルドのハンターも到着したので、彼らに山田を任せて死体の調査を始めた。 暫く調査をしていたが、余り見てていい気分の死体ではなかったため、深海は少し離れて現場周辺に何かないか探していた。 すると、近くに小さな石に、「……御…」と一文字以外は掠れて読めない墓のようなものを見つけた。 「名前か?」 それにしては、墓石も手のひらサイズしかなく、動物のような小さな物を埋める盛り上がりしかない。 さすがに子供や赤ん坊でも、もう少し盛り上がりが大きくなるはずだ。 深海は、近くにタンポポがあったので、それを摘み墓に備えて手を合わせた。 なぜ知らない、しかも人間じゃないかもしれないのに、このような事をしたのか。 深海は無意識的にそれを行っており、別に何かに乗り移られているわけでもなければ操られているわけでもない。 慈愛の心で供えたわけでもない。 ただ、気づいたらその一連の行動を行っていた。 「深海くーん」 「教授、なにか見つかりました?」 城ヶ崎が死体の方から、何やらメモを持ってきて見せてくる。 そこには「うねうね」とだけ書かれていた。 「うねうね……」 「実は先月、7月のいつだったかに、蒼で同じような事件が起きたようです。 手口も同じような感じらしく、同一犯の可能性で見ておいた方がいいでしょうねぇ~」 「そもそも人間なんすかこれ?寄生虫とかは?」 「先月もその疑いを持ったハンターがいたので、解剖してみたんですが、どうやら何もでなくて。いやぁ~、不思議ですよねぇ~」 魔力は感じなかった。 刃物などを使った形跡も無い。もちろん、内部から破かれたような傷口なので、それは不可能に近いだろう。 「ひとまず、今日はこれで調査を終了しましょう~。これから蒼の街に戻っても、23時は過ぎそうですからね~」 「わかりました」 と、城ヶ崎が魔力の玉を作り出し、死体の近くに置いた。 既にほかのハンターも撤収したようで、死体だけが放置されている。 「ちなみに、この死体は囮に使います。何かあったら、私の魔力玉が感知してくれるというわけです~」 「囮……ってことは」 「ええ、おそらく犯人はこの周辺にまだ潜んでいると思われますからね~」 まず死体を処理していけよ、と深海が思う前に、城ヶ崎がそう言った。 でもやはり、このまま死体を残していくのは、正直誰だって嫌だろう。 だがそれを言った所でどうしようもないため、深海はほかのハンターと共に街へと戻っていこうとした。 「教授は帰らないんすか?」 「あ~、私はここでお留守番です~。野生動物に死体を荒らされる可能性もあるので、それを阻止しなければ~」 「一人で?」 「はい~、なんなら、深海君もここで一緒に死体をチェックしておきます~?」 「いや、遠慮しときます」 さすがに朝から付き合わされた挙句、疲労も濃く体には現れている。 一回蒼へと戻り、城ヶ崎が予約していたホテルに泊まって疲れを癒すため、他のハンターと共に深海は帰った。 城ヶ崎は鼻歌を歌いながら、他のハンターが持ってきたのか、寝袋を草の上に広げて寝始めたので、色々と心配しなくてもいいだろう。 何か分かったら教えてくれるだろ、と思いながら、一日目は終了した。 ☆☆☆ 8月19日、午前5時。 深海が朝、目を覚ますとそこは森の中だった。 「はぁ?」 朝の冷え込みで目が醒めたようで、まずここがどこなのかわからないし、なぜここにいるのかもわからない。 確か蒼のホテルは個室で、ベッドで寝た所までの記憶はある。 ではなぜこんな森で目が醒めたのか。 ひとまず冷静になって携帯を取り出し、城ヶ崎へと連絡を取る。 「はいはーい、深海君早いですね~。私も1時間前に起きたところでして~」 「教授、あのホテル泊まったら意味不明な所で起きたんすけど」 「はいぃ?言っている意味がちょーっとわかりませんねぇ~」 とりあえず目が覚めたらホテルではなく森の中だった事を説明する。 そして、城ヶ崎の目の前の死体に変化は無いか尋ねた。 「そうですねぇ~、この死体には特に変化は何も」 「……わかりました」 じゃあなぜ自分は今ここにいるのか。昨日何かしたとすれば、その死体を見たことくらいしか覚えがない。 「お兄ちゃん」 「!」 いつの間にか、深海の背後に小さな着物をきた少女が立っていた。 少女からは魔力も、気配すら感じない。例えるなら、この世の者でないような――。 「おい、お前か?」 「ふふふ」 その態度が少し勘に触ったので、深海はもう一つの可能性も相手につぶやいてみる。 「……うねうね」 「ダメだよお兄ちゃん。その名はダメ。理解してもダメ。お兄ちゃんがお兄ちゃんでなくなっちゃうよ」 うねうねの正体と思ったが、そうではないらしい。 謎の少女は鼻歌を歌いながら、歩いて深海がいる方向とは反対方向へと行ってしまった。 「待て!」 「ふふふ、お兄ちゃん。死にたくなかったら、早く見つけてね」 少女が立ち止まり、振り返る。 そしてそれだけ言うと、すうっと消えてしまった。 少女が居た場所まで行くと、どうやら山の頂上だったようで、山の麓の方に村みたいなものが見えた。 すぐさま、深海は写メを撮り城ヶ崎へと送り、いつの間にか切れていた携帯を再度繋いだ。 「教授、今送った画像の場所わかりますか?」 「うーん、ちょっと難しいですねぇ~。今からネットに繋いで調べてみるので、一度切ってもいいですか~?それと、深海君が失踪したことはギルドに伝えておきますね~」 「了解、こっちはこっちで何か手がかり探します」 そう言って電話を切る。 一体ここはどこなのか、そしてあの謎の少女は何者なのか。 あのグロい死体と関係がある事象なのか。 事件は始まったばかりである――。
https://w.atwiki.jp/kamikaze4u/pages/255.html
後日譚~共通エピローグ~ 現実世界へと帰還した貴方達は、難なく日常に戻る事ができた。 全ての者は、先日まで普通に登校、もしくはハンターとして、軍人や騎士団として勤務や各地を動いていた体になっていた。 そしてこの異次元にいた3ヶ月の記憶は、各々の記憶として残ってはいたが、それと同時に現実世界での不自然さを生まないために、現実世界で学園に登校や仕事に就いていた記憶もあった。 ――世界は、改編されたのだ。 ☆☆☆ まずハンターカード、煌石が無くなっていた。 そのため皆、カードを手に入れた当初よりも弱くなっていたものの、闊歩する魔物もそれに合わせた強さになっていた。 今にして思えば、魔物が急に強くなったのもハンターカードや煌石が出てきたのもアドラメレクの仕業と考えてもよかったのだろう。 さて、肝心の改編部分だが、順を追って説明していこうと思う。 2年前の年末。 漣島に訪れた貴方達は、ランマーと呼ばれる巨大な蛸型の魔物と遭遇した所からだ。 【碧海の深き遺宮・前編】 魔物ランマーの能力の洗脳により、大城太平と筧利通が裏で動いていた事は変わらなかった。 悪魔ではなく、ただの魔物として分類されていた事が大きな相違点だろう。 【悠久に聳える雪竜の脈動】 ラウム山脈の調査に向かった貴方達は、ラウム神殿・麓で戦神ラウムと出会う。 グレイシアと言った五大竜は改編された世界では存在せず、ラウムも神として崇められている存在だった。 ラウムを倒した貴方達だったが、白神凪はラウムに憑かれ、寿命と共に戦神としての力を手に入れたという事になっていた。 ラウムの命の源ともいえる神玉(黒耀玉)は、魔物の力を操る尸黄泉と包帯の男によって回収されたという点は変わらず。 そして、調査終了後。 織ヒカルは水鏡流星に呼び出され、洗脳された水鏡の手により重傷を負う事になる。 以後、織ヒカルは意識不明の重体が続き、意識を取り戻したのはつい最近の3月という改編になっていた。 【深淵のエクスハティオ】 蒼特区、エクスハティオという古神がいたと言われている場所を貴方達は調査した。 戦神ラウムの噂を聞いた小此木剛毅の依頼によるものだ。 調査は無事に終わり、『竜の秘宝』は『神の秘宝』として小此木の手に渡る事になる。 が、それも束の間。 調査終了後に現れた土御門正宗・伍代により、小此木は倒れる事となり、秘宝を奪われてしまう。 そして伍代を撃破した柳茜は、戦神ラウムと共に魔物と戦ったカーネリアの異名である『戦乙女』の名で知れ渡る事となる。 竜が存在しない以上、竜の戦士と呼ぶ者はもういないのだ。 【碧海の深き遺宮・後編】 魔物ランマーを討伐するべく、再度調査を開始した貴方達。 飛鳥軍と連携をしつつ、黒幕であった双海思永を倒した。 正気に戻った双海は、今は蒼ギルドで大城達と共に捕まっているそうだ。 【東海に眠る竜】 魔物バルガを討伐するべく、貴方達は飛鳥軍と協力して海底神殿へと向かった。 そこにいたのは、ウロボロスではなくバルガ達の親玉、魔獣バルガランという上位魔物だった。 ウロボロスが存在しないため、未来や過去の予知もなく、貴方達はバルガランを飛鳥軍と協力し撃破した。 【運命の塔】 洗脳された東十常剣が起こした、此度の事件。 しかし、悪魔ロノウィは既にいないため、ロノウィの力はなくとも化け物レベルの強さを持つ土御門正宗を殺すことは叶わず。 イーストセントラルタワーにて、強襲してきた水鏡流星と互角どころか圧倒し、命を落とすことは最後までなかった。 結局、洗脳された東十常剣も正宗によって捕まった。 優位に傾いていたが、カッツェの爆弾によりタワーが爆破され、さすがの正宗もこれにより避難することになった。 そして、この事件により佐治宗一郎は行方不明として、姿が消えることになる。 佐治が東十常剣を庇い、洗脳された水鏡に貫かれる所は変わらなかったのだ。 違う点は、この時点まで水鏡が洗脳されていた点だ。 ベレトの力を水鏡が手に入れることが無かった世界。 そのため、水鏡が正気に戻ったのは、この事件で貴方達に負けた時にやっと、だったのだ。 【異空の大樹】 戦神ラウムの声を、憑りつかれた凪以外で聞けるという存在の一人、カーネリア大聖堂の大神官でもあるウバルという男に導かれ、貴方達は真実を知る事になる。 包帯の男が全ての事件の黒幕で、気象制御装置を復活させてこの世界を終わらせようとしている事。 水鏡によって刺されたが、突如現れた漆黒の鎧の者が佐治宗一郎を時間の進まない異次元へと転移させたため、彼を救う方法がエストレアという出雲の機械竜が知っている事。 大神官ウバルからその話を聞いた貴方達は、機械竜エストレアが眠る異次元へと向かった。 そこで、包帯の男と協定関係にあった松原クリストフの孫娘のエレナ。 また水鏡流星も人間であったため、ユグドラシルの水を飲んで正気に戻った。 佐治宗一郎も救い、無事に全ての解決へと向けてゆっくりと進み始めた。 【ラストイベント:気象制御装置ハルフェの停止】 ラウム山脈山頂、ラウム神殿最奥にて包帯の男を追い詰めた貴方達。 神の秘宝によりハルフェを起動させるも、尸黄泉や槐志度といった者達の助けを受け、貴方達は包帯の男の撃破と気象制御装置ハルフェの破壊に成功する。 包帯の男は捕まり、全ては解決したのだ。 そう、滅びの星ハミルトンやアドラメレクが消滅したため、この世界の問題は全て――。 ☆☆☆ 粥満ギルド地下、特別犯罪者収容所。 災害レベルの犯罪者達を収容するこの場所に、一人の男がやってきていた。 「…随分と久しぶりだな」 「…何しにきた。宮廷の犬が…。それにお前とは会ったこともない」 改編された後の世界では、一切事件にかかわらなかった神崎信の姿が。 そして、彼が会っているのは包帯の男だった。 「そうか。『この世界では』初めてだったな」 「…意味が分からないことを…。組織の話なら話すことは何もない。俺は何も知らない上、組織に切り捨てられた時に、組織に関わる全ての記憶が消されているからな」 「…わかっているさ。私に与えられるはずだった、記憶改ざんの力も既に回収されてしまったのはな」 なぜこいつはそこまで知っているんだ、と言わんばかりに、怪訝な表情の包帯の男に、神崎は笑った。 「結局、犬なのはお互い様という事だ。そこで、犬のお前に一つ提案をしよう」 「なに…?」 大陸歴2016年3月31日。 その日、全ての事件が収束するかのように。 神崎信は過去を清算するために。 改編された世界で、自らの代わりに不幸を全て背負った男のために。 カーネリア大聖堂の鐘が、全てを祝福するかのように。 全ての物語は、ここで終わりを告げた――。